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おうち、てらす

アトピーの当事者に、希望を 〈前編〉

 

アトピーの治り方は、十人十色。
だからこそ、たくさんの迷いや不安や葛藤があります。

今回は、自身でもそんなアトピーを克服した経験をもつ、フリーライターの岡田基さんにお話を伺いました。


岡田基さん

岡田基さん

1989(平成元)年9月26日生まれ。
広島県福山市出身。
自身のアトピーとの葛藤の経験から、
同じように苦しむ人々のために
『アトピー体験談 希望へ』を執筆。
現在はフリーライターとしても活躍中。

 

−アトピー体験談の本を出されるんですよね。おめでとうございます!
はい、この度、自費出版で本を出すことになりました。自分自身、幼少期からアトピーに苦しみ、悩まされていました。今でこそコントロールできるようになったけれど、特に中学時代に最も悪化したときは、本当に辛かった今、同じような境遇に置かれて苦しんでいる人たち(本人だけでなく家族や周りの人も含む)に、希望をもつきっかけを提供したい。そういう思いをもって、今回自費出版に踏み切りました。本には、8名のアトピー経験者の方々にもご協力をいただいて、9名分の体験談が詰まっています。

 

岡田基『アトピー体験談 希望へ』

岡田基『アトピー体験談 希望へ』

 

−体験談のなかには、アトピー持ちの方だけでなく、アトピーの子どもを育てられた方のお話も載せていらっしゃるんですよね。
そうです、4名のご両親のお話があります。取材するなかでの気づきの一つが、アトピーに限らず、腕がない、目が見えないなど、四肢や五感に何かしらの障がいを抱えた、いろんな子どもたちがいます。ただ、そこに共通しているのは、ご両親がそのことに罪悪感を抱いてしまいがちだということ。自分の体から生まれてきた子どもだから、自分のせいだと感じてしまうのかもしれませんが、それは感じる必要はありません。
誰のせいかなんて、突き詰めたって何も変わりません。それに誰のせいでもないから。
ご両親が自身を責めたり、子どもに対して「かわいそう」と感じていると、そういうものって子どもに伝わってしまうんですね。
「あ、自分ってかわいそうって思われているんだな」って。それがその子の自己肯定感に影響を及ぼす。両親に認められること、褒められること、笑顔で語りかけられることが、なによりその後の心の成長にいい影響を与えるんです。
「治らない、治らない…」とご両親の気分が落ち込んじゃうと、それが子どもの症状にまで影響して、さらに悪化することもあります。愛情ゆえに干渉しすぎたり、抱え込んだりしてしまいがちです。

 

−そんな状況を打開あるいは回避するには、何ができるのでしょうか?
前提として、NPO法人「アトピーを良くしたい」さんのコンセプトともなっている、100人いれば100通りの治り方がアトピーにはある、ということがあります。原因も様々。
僕は温泉があまり効かなかったけれど、それが合う人もいるし、ヨガをやったり日光浴をやったり、いろんな方法がある。今の皮膚科学会で標準治療とされているのがステロイドという塗り薬で、それも同じように、効く人と効かない人がいて、効かなければ悪化することもあります。
いろんな治療法があるから、これじゃなきゃだめって決めつけるんじゃなくて、いろいろな可能性を考えることが大事。
お医者さんだけじゃなくて、実際にアトピーを経験した人とのコミュニケーションのなかで得られる気づきもあります。僕自身はアトピーで苦しんでいたとき、自分の殻にこもってしまったから、そういうコミュニケーションの機会を掴めなかった。だからこそ、この本が、同じような境遇の人たちが殻を破るきっかけになれたらいいなと思っています。

 

−今回の『アトピー体験談 希望へ』の出版を期に、ライターになられたと伺っていますが、そもそも本を書こうと思われたきっかけは何だったのですか?
まずは、時系列でお話ししますね。僕は物心ついた頃からアトピーを発症していて、温泉水に浸かる温泉療法を自宅で実践していました。症状は出ているけれど学校に行けなくなるようなほどではなくて、「夏休みが嫌いな男の子」でした。
夏休みって、学校がないから友だちに会えないでしょう。そんな、ふつうのサッカー少年。

中学に上がるとき、受験をして地元からちょっと離れた私立校に通うようになって、環境が大きく変わりました。幼稚園からずっと仲のよかった友だちと別れて、周りが全然知らない人ばかりになって。ちょっと人見知りになりました。
小学校で続けていたサッカーを辞めて、バスケ部に入ったけれど、それも辞めてしまって。だから、毎日が家と学校の往復、それにたまに塾が加わる程度。バスケを辞めたから運動も全然しなくなって、ゲームか勉強ぐらいしかしていませんでした。
そういう不健康な状態であったこともあってか、あるときをきっかけに、一気にアトピーがバーンと爆発しました。

夜寝る前に体が痒くて、掻きむしって寝て、朝起きたら腕が動かなかったんです
皮膚という皮膚がバリバリになって、関節を動かすということがもう辛い。痛い。
皮膚がぱっつんぱっつんになって、起き上がって台所まで行くのも一苦労という状態。見た目も見た目だし、思春期ということもあって、お医者さんの勧めで、学校を休んで自宅療養をすることになりました。

実に、4ヶ月。
最初は温泉療法をしていたけれど、効果がなく…。だから、今度はある治療法に切り替えました。一般の人が聞くとちょっと「えっ⁉︎」と思うかもしれませんが、真逆の、お風呂に一切入らないという治療法です。
温泉療法は体にいいという側面ももちろんあるけれど、逆に皮膚の欠落を招く側面もある。それがかえって皮膚の回復を遅らせていたようでした。
そこで、お風呂をやめて、薬を塗っていたのもやめて、何もしないことにしました。ケアを何もしない、自然治癒力を活かしました。
そうしたら、4ヶ月で顔も足も、全身がきれいに治ったんです。

先生に「もうお風呂入っていいよ」と許可をもらって入ったら、びっくり。
3ヶ月分の垢がボロボロと落ちて、あれは衝撃でしたね。
人間ってすごい。皮膚の再生能力ってすごい。感動しました。
というわけで、そこでアトピーはぐっと改善して、高校に入ったら今度はフェンシングを始めました。

−何でまたフェンシングなんですか?
かっこいいから。
という憧れももちろんあったんだけれど、それに加えて、肌環境をあえて不衛生な状態にさらすことで強くすることができるんですね。フェンシングって、年がら年中長袖長ズボンのユニフォームを着て、汗はだっくだく。それでかなり鍛えられましたね。

高校ではアトピーはかなり安定するようになって、受験期には多少荒れたけれど、中学生の頃のいちばんきつかった時期に比べたら、全然。その後も、アトピーはコントロールができるようになりました。

 

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