すべての家族と、それを支えるすべての人を照らす

おうち、てらす

だから、走り続ける。

 

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「核家族」のなかに暮らし、日々を忙しなく過ごしていると、小さな子どもたちと接点をもつ機会はずいぶんと限られてきます。かく言うわたしもご多分に漏れず、週末の電車で家族連れを見かけるとほっこりして、五日間ほとんど子どもの姿を見なかったことに気がつきます。子育ての当事者と非当事者が交わる機会が極端に少ない環境では、人生で初めて抱っこする赤ちゃんが我が子、なんてケースも少なくないのではないでしょうか。

 

赤ちゃんが生まれた途端に、プロのパパ・ママになる人はいません。
赤ちゃんが生まれた途端に、育児も仕事も卒なくこなせる超人もいません。

 

今回のゲストは、堀江敦子(ほりえ・あつこ)さん。スリール株式会社を立ち上げ、学生たちが共働き家庭での子育て体験を通してキャリアを考えるワーク&ライフ・インターンを運営している社会起業家です。「人生を諦める人を減らしたい」、その強い思いを胸に日々活動をされています。

実はインタビュアのわたしも学生時代にこのインターンに参加した一人です。今回はわたしが「あっこさん」と呼び慕っている堀江さんに、彼女の強い思いを生み出したストーリーをお聞きしました。

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sae

あっこさんという女性を一言で表現すると、「パワフル」なんですよね。周りの人をたくさん巻き込んで、世の中を変えていく人。最近はチェンジメーカー10にも選ばれ、今後の活躍が期待されている、時の人あっこさん。そんなあっこさんが、どんな思いでスリールをやっているのか、パワーの源泉は一体どこにあるのか? そんなお話を伺いたいです。

akkosan

転機が二度あったと思っています。一つが、「自己ブランディング講座」という勉強会に行ったときのこと。自分というものを突き詰めるワークをやりました。そこで聞かれたのが、次の三つの質問でした。

「自分がずっと好きでやってきたことはなんですか?」
「自分が持っているスキルでお金になっていることはなんですか?」
「自分が持っているスキルで、社会から求められているものはなんですか?」

当時、仕事でマーケティングリサーチをやっていたのですが、そんなことは全く頭に浮かばなくて。代わりに出てきたのは、「子ども」と「女性のキャリア」。

そのとき、「ああ、わたしってこのことしかやってこなかったんだ」ということに強く衝撃を受けました。

確かに、誰に何も言われなくても、ただ子どもが大好きだったから勝手に子どもを見ていたし、友だちが「三人子どもを産んで、専業主婦になりたい~」と言えば白河桃子先生の『婚活時代』のデータをもとに「いいんだよ、それを選択するのは自由だけれど、そうすることによって生涯賃金が2億5千万円も下がるの知ってた?」なんて何十人もに説いて回っていた。これを仕事にしようなんて一度も考えたことはなかった。

子どもを見ることも、キャリアのことも趣味でしかなかったんです。そうやって振り返ってみると、「ああ、わたしって、障がい者とか高齢者も包摂できるような社会を考えていたりしたけれど、でも実は、結局これしかやっていなかったんだな」って気づいたんですね。この気づきをきっかけに、「チョイラビ」っていう大学生向けの勉強会を開催しはじめました。

 

もう一つの転機は、仕事が忙しくなっていた時期。

体調も崩して、「本当に自分がやりたいことってなんだろう?」ってわからなくなってしまって。社内外で勉強会やセミナーをやったり、いろいろと活動をしてきたけれど、ある日それが全部、パッと重なった。自分に何ができて、何をやるべきなのかを考えたときに、大学生の子育て体験というのがつながりました。お風呂場で、それはもう唐突に。それで、起業を決意しました。

sae

会社を飛び出して起業をするって、とても勇気がいりませんでしたか?

akkosan

迷いは全然なかったです。ずっと探し求めていたものだったから。自分の軸になるものが「子ども」と「女性のキャリア」であることが明らかになった後も「どうやったら実現できるんだろう?」「わたしらしいものができるんだろう?」ということはずっと考えていたことだったので、お風呂場でやり方がつながった瞬間はもう、笑いしかなかった。「みつかったよ!!」って。

とはいえ、いざ起業するとなれば考えなきゃいけないことももちろんあります。そのときにふと思い浮かんだ言葉が、「一勝九敗」でした。

一勝九敗って、どういう状況だと思いますか? 九連敗したあとに、一勝してはじめて一勝九敗と言える。それで、勝ちなんです。九連敗したあと、次負けるか勝つかわからない。ぶっちゃけ、負ける確率の方が高い。それでも「もう一戦お願いします!」って言えるかどうか。途中で諦めてたら絶対、一勝はできない。

わたしは起業を考えたとき、それで九連敗してもなお、「もう一戦お願いします」って言えるかを自分に問うて、「言える」って思ったんです。なんでかっていうと、自分が信じてるものだったから。絶対にこの経験をすれば人は変わるし、子どもにとっても家庭にとってもいい形がきっとできるはずって。もちろん、わたし一人の経験だから、他の人がやったらどうかっていうことはまだわからないけれど、わたしはそれを信じられる。

だからわたしはやり続ける。しかもそれが「子ども」という、大好きなものだから。だからこそ、そこまでやりきる覚悟ができたし、やろうって思えたんだと思っています。

sae

「わたしは信じられる」と言い切れるのは、ご自身の経験があってこそ?

akkosan

そうですね。とは言っても、今まで失敗ばかりしてきました。

前職の楽天時代に「働きやすい環境づくりをしていきましょう」と同期に呼びかけたとき、みんな「いいね」と応援してくれたけれど、二言目には「がんばってね」と言われてしまった。

なので、まずは一人で動いてみたんです。社内でワークライフバランス講座を開講したら、2、30人くらいが来てくれたのですが、講座をやるだけでは人は簡単には変わらないということを痛感しました。

みんなわかっているんですよね、ワークライフバランスが大事ってことは。でも「やっぱりお客さんがいるし…」とか「制度が整っていないし…」と言い訳ばかり。そのとき、「この人たちにはなりたい姿がないんだ」と気づいたんです。もし自分になりたい姿というものがあるならば、どんなに忙しくても時間を捻出するはず。でも彼らは、あまりにそのときそのときを生きすぎていました。なりたい姿を考える機会、将来を体感するような機会がなければだめなんだと確信をしました。

そんなふうに、わたし自身が200人以上の子どもたちと接してきて感じたこと、いろんな人にアタックして学んだこと、そういう経験から、「これはいけるはず」と思えるやり方を見つけられました。

この「かちっとくる」感覚は、それまで自分がいろいろ試行錯誤を実際にやっていたからこそ生まれるものだと思っています。いろんな方法を編み出して、トライしてみて、ようやく「これだったら答えに近いはず」というものに行き当たるんですね。

だから、やっぱり最初は「なにやってんの?」って言われることもあります。ネガティブな批判をされることもあります。まずは実績を上げるしかないと思って、5年というタイムリミットを自分のなかで設けました。5年、とことんやって芽が出なかったら、求められているものじゃなかったんだなと諦めようって。

sae

昨年11月に、その区切りの5年目を迎えましたね。どんな変化を感じていますか?

akkosan

1年目、3年目、5年目でわたし自身の覚悟の形が変わってきています。3年目まではほぼ個人事業主のような感じで、学生に手伝ってもらいながらやっていましたが、5年目を迎えた今、組織にして大きくしていく必要性を感じています。大きくならないと、社会にインパクトを与えられないから。

一過性のものではなく、ちゃんと根を生やしていきたいです。本気で信じてくれる仲間が、周りに何百人とできた今だからこそ、大きくジャンプアップができると思っています。

sae

あっこさんが「子ども×女性のキャリア」という軸に行き着いたのは、なぜだと思いますか?

akkosan

それは、わかりません。スリールのインターンの研修のなかで、「10人は嫌だと思うけれど、自分は好きで続けてきたことはなに?」という問いかけをしています。これだと思うんです。

たとえば、「わたしは”待つ”のが嫌じゃない」だとして、それに「なぜ?」と聞かれても「別に、嫌じゃないから嫌じゃないんです!」としか言いようがないですよね。

「コツコツやるのが好きなんです」とか「韓国が好きなんです」とかって、ただ純粋に、理由もなく好きなものなんです。だから、わたし自身その好きなことを仕事にしようなんて一回も思いもしなかった。教育と福祉なんて、それこそ1ミリも仕事にしようと思ったことはなかったんですよ。趣味だから。

sae

その軸にはどうやって気づいたのでしょうか?

akkosan

「自己ブランディング講座」のワークで、初めて気づきました。それまでは全く気付いていなかった。大事なのは、自分を振り返ることですね。

「子ども×女性のキャリア」というのが、わたしにとって初めて、自分が「好きだ」と思えることで他者から認められたことでした。わたしは子どもが大好きだし、子どももわたしのことを大好きでいてくれた。女性のキャリアのことも、DV問題を考える地域の集まりに参加したことがきっかけだったけれど、自分で調べて意見を言って、それに対して「いい考えだね!」と褒められたことだとか、そういうことの積み重ねだと思うんですよね。

やっているうちに「楽しいな」と思って、好きなものが実になるからこそそれがスキルになり、お金になる、求められるものになると実感する。

竹って節目があるでしょう。あれが短ければ短いほど、太くて強い竹になるんだって。それって人間もそうで、節目を短く持つ、つまり頻繁に振り返ることが大切なんです。

わたしは、その機会をすごくたくさん持っていたと思う。中学のときに児童虐待をテーマにレポートを書いて、「虐待はその人のせいじゃない。そもそも親になる教育もされていないし、サポートもされていない。そんな状況だと誰しもが虐待に陥る可能性がある。もっとみんなを巻き込んでやっていく社会が求められている。これをずっと追求していきたい」と締めくくっていました。高校のときも、大学の卒論でもそう。

形を変えて、でも実は一貫して、ずっと同じものを追いかけてきたんですよね。

 

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One thought on “だから、走り続ける。”
  1. […] 引きこもりの支援相談員をしている佐々木克彦さんや、オレンジリボン活動をされているシンガーソングライターの氏家エイミーさん、アトピーを自分自身で克服して、それをもっといろんな人に伝えて勇気づけたいと本を出された岡田基さん、スリール株式会社を立ち上げ、学生たちが共働き家庭での子育て体験を通してキャリアを考えるワーク&ライフ・インターンを運営している社会起業家の堀江敦子さんなどに、インタビューさせていただきました。 […]

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