すべての家族と、それを支えるすべての人を照らす

おうち、てらす

主人公たる子どもたちの、充電する場所を

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今回お話を伺うのは、ひとり親家庭や再婚家庭における子どもたちへの支援を行っているNPO法人ウィーズ副理事長の光本歩さん。シングルマザーやシングルファザーなど、親たちに向けた支援をしている団体は数多くあるものの、子どもたちのニーズにフォーカスした支援はまだまだ十分に整っているとは言い難いのが現状です。ご自身も父子家庭で育った当事者として、活動をされているあゆみさんの熱い思いをお聞きしました。

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sae

面会交流や学習塾などの事業をされているNPO法人ウィーズさん。具体的にはどんなことをされているんでしょうか?

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わたし自身も父子家庭に育っている当事者として感じるのは、親が「子どもはこう思っているんじゃないか」と推測して必要な支援を判断しているケースが多いこと。それって果たして本当に子どもが欲している支援なのか、というと実はそうでなかったり。 まずは子どもの本当の気持ちを聞き出すということを、わたしは一番大事にしています。それに基づく支援として、ウィーズでは学習支援と面会交流、そして支援者の養成の3本立てで提供しています。

面会交流というのは、親同士が離婚した子どもが、同居している親から別居している親のところに会いに行くことです。親同士は会いたくないことが多いので、わたしたちが間に入ってお子さんの受け渡しとか付き添いをしています。

支援者の養成講座としては、子どもリフレクター養成講座を行っています。これは第1回が今月なんですけれど、面会交流の支援をやっている人や、保育士さん、学校の先生、行政の窓口の人で子どもに関わる仕事をしている人などを対象としています。子どもに寄り添った支援とは何か、活動をする上でどういう視点が必要かということを2日間の講座で学んでいただくものです。

sae

一方の親に肩入れしない、子ども第一だからこそ保たれる公平性がありますよね。

ayumi-san

お父さんの味方もしないし、お母さんの味方もしない。本当にただ子どもの味方をしたい。そういう団体として動いています。

sae

あゆみさんが、子どもの味方であろうと思うのはなぜですか?

ayumi-san

親が離婚したときに、子どもにちゃんと説明をしていない親ってたくさんいる。たとえば、いきなり「お父さんもう帰ってこないよ」って言ったり、「サンフランシスコにしばらく出張だから帰ってこないよ」なんて嘘をついたり。そういうふうにごまかしごまかしやり過ごして、親たちの間だけで話を進めてしまう。どっちと一緒に暮らすのかということも選択権を与えられず、「あなたはこっちの親と一緒に暮らすのよ」と押しつけられてしまう。それによって、子どもの人生が変わってしまうのに。

わたしの場合は、母親が父親に内緒で借金をして、それで離婚して父親と夜逃げをしました。そのときも急で。前兆は確かにあったんですよ。よく喧嘩してるなあとか、お母さんが闇金にお金借りに行ってるなあとか、わたしの友だちのお母さんに「今日の生活費3000円貸してくれない?」って言ったりとか。そういうものを目にしてきたから、前兆はあった。でも、じゃあいつ離婚して、夜逃げをするか、という話を聞かされたのは前日でした。次の日から中学の宿泊研修で、それの実行委員長をやっていたのに。友だちにもバイバイ言えなくて、友だちとか先生も「え、来ないけど?!」ってびっくりしただろうと思う。もう13年住んでいた土地から引き離されて、これからどうなるんだろうと不安でした。

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壮絶ですね…。

ayumi-san

引っ越したら引っ越したで、もう夜逃げだから住所も動かしていなくて、そうすると転入手続きができないんですよね。「居所不明児童生徒」に該当して、4ヶ月中学校に通っていなかった。わたしには、学校の先生になるという小学時代からの夢があって。その4ヶ月に「学校の先生になるには高校・大学を出なきゃいけないのに、中学校行ってないわたしって大丈夫?」って心配になって、親に泣きながら「学校行きたい」と訴えました。父親と一緒に教育委員会に行って相談したら、卒業生から制服を集めてくれて、お金がないなかでなんとか中学校に行ける状態にしてもらったんです。

そこで相談をしたことによって、第三者に助けてもらえたということがすごく嬉しかったのを覚えています。と同時に、それってすごく危ういことだなと、中学生ながらに思ったんです。義務教育って言いながら、こんな状況になったら誰もそれに気づかない。わたしたちは教育委員会に助けを求めに行けたからまだ救われたけれど、そういう情報もなかったり、発想できる余裕がなければ、卒業もできないまま中学生が終わってしまうかもしれないですよね。じゃあその先どうするの? そう思ったら怖くて。

中学を卒業するとき、お父さんからは「うちはお金がないから高校には行かせられない。行くなら自分でバイトして行きなさい」と言われました。4月から働けるバイト先を探して、公立高校に進みました。わたしの担任の先生が若い女の先生だったのですが、偶然、わたしと同じような環境に育った人で、いろんなアドバイスをくれたんです。高校進学の際は住所がなくて奨学金の審査を受けられなかったのですが、「それは大学進学でも同じだよ。一般的な育英会とかの奨学金は一切あてにしないほうがいい。あなたが大学に行きたいんだったら、バイトをするのはもちろんだけれど、授業料が完全免除になる特待で入るしか道はない」っていうのを教えてくれて。ほかにも、一人暮らしをするにはいくら必要で、そのためには月何万稼がなくちゃいけないから、授業受けながらこれだけバイトしなさいみたいなのを全部プランニングしてくれた。だから、わたしも目標を立てやすくて、そういう先生がいてくれたから、この困難を乗り越えられたと思う。

だから、自分以外にも経済的な負担を感じていたり、親の離婚によってメンタル面で困難を抱えていたりする子たちを、わたしも学校の先生になって支援をしたいと強く思いました。

sae

周りの人たちに恵まれて、今のあゆみさんがいるんですね。

ayumi-san

その後無事に大学に進学したのですが、2ヶ月経ったときにお父さんが胃潰瘍になって倒れてしまいました。妹もまだ中学に入ったばかり。「これからあの人たちの生活どうするの?」と考えて、大学を辞めました。

sae

え!

ayumi-san

大学を続けながら支援をするということも考えたんだけれども、わたしのなかに家族に対してコンプレックスがどこかにあって。「家族から逃げて大学に入った」という気持ちが拭えなくて、高校の先生にその話をしたときに、「親を認められないのは悲しいことだよ」と言われました。その時のわたしには、その言葉がすごくしっくりきたんです。

全部親のせいにしていたんです。他の子はバイトしなくても奨学金を受けられるし、親から仕送りをもらって大学に行けているのに、自分はすごく大変な思いをしている。それは親が離婚したからじゃんって。そして、それでもなんとかこうして頑張ってこれているということに、自信をもっていた。

でも本当は、親のことを嫌いにはなれないんですよね、子どもって。親が大変だったのもわかるし認めたいと思っているんだけれど、そうできなかった。それが自分の中で引っかかっていて、そのことに無自覚だった。それを先生が言ってくれたんですね。「じゃあ親や家族に一回向き合って、なんとかしてみようかな」と思って、大学を辞めて正社員として働くことにしました。

そのなかで、これまでの様々な問題意識–––経済的に大変な人や、わたしみたいに小学校中学校の義務教育の段階からレールを外れてしまった子ども、親の離婚によってダメージを受けた子どもなどへの支援体制がないということ–––に対して、大学は辞めてしまったけれど、自分にもできることはないだろうかと思って、静岡で塾を始めました。それが2009年。

長くなってしまいましたが、これがわたしが今の活動に至った理由です。

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sae

子どもを主役にするという新しい切り込み方を始められて、困難はありましたか?

ayumi-san

子どもの声って拾えないんですよね。大人は知恵もついているししゃべれるから自分の気持ちを表現することができる。でも子どもは言えない。

その子どもにじゃあどうやって気持ちを聞くかということを考えたときにいちばん有効なのは、ピアカウンセリングといって、当事者が「自分もこういう経験をしてきて、◯◯ちゃんの気持ちはよくわかるけど、どう?」っていう感じの聞き方をすると、突然スクールカウンセラーの人がいきなり来て聞くよりも、わりと早い段階で打ち解けやすいというのがあります。データとしても、親の離婚を経験した子どもたちの半数以上が誰にも悩みを外に出せないと回答していて、話せている子のなかでもいちばん多い相談相手が、同じ経験をした友だちなのだそうです。逆に言えば、同じ経験をした友だちがいなかったら話せない。だから、当事者であるわたしたちであるからこそできることだと思うので、大変だけれどやりがいはあります。

あとは、子どもからはお金を取れないということも難しさの一つですね。団体として成り立たせていくという意味でも。

sae

面会交流は親御さんから料金をいただくんですか?

ayumi-san

そうですね。面会交流については、今支援対象にしているのが、調停とか審判とか裁判とか、そういった機関を通して離婚や面会交流の取り決めがされた人たちです。現状ですと彼らは、「面会交流を何ヶ月に何回何時間どういう場所でやりなさい」っていうふうに調書や審判書でばーんと出されているんです。

行政にもそういう人たちへの支援体制があるにはあるのですが、お金がない人しか利用できないんです。お金が多少でもあれば、支援の対象にならない。そこをわたしたちがやっています。でも、理想とすれば面会交流の支援がなくても、親同士が「夫婦」としては無理でも「お父さんお母さん」として、子どものために、と自分たちで面会交流をやれることだなと思っています。そこを目指して、早いうちに支援から卒業してもらえたらと思っています。

sae

それが実現するためには、これから何が必要なんでしょう?

ayumi-san

親もやっぱり孤立していて、どうしていいかわからないし、周りに相談できないでいる。子どもの気持ちを聞きたいけれど、そもそも子どもになんて聞いたらいいかわからない。そこに入れる第三者が必要なんだと思っています。もちろん親子の関係って大事なんだけれど、誰かしらそのなかに入って行ける余地があることもまた大事。親も誰かに頼ることができて、子どもも誰かに頼ることができて、その家族全体に誰かしらが寄り添ってあげられれば、それが家族の潤滑油になる。たとえば近所のお節介おばちゃんのような人がいれば。

わたしたちも面会交流を通して支援者として家族に入り込むのですが、親子でも相容れないところってあるんです。そういうところをお互いに受け入られるような手助けをする存在が必要なんですよね。

sae

第三者っていうのは、どんな人がなれるでしょうか?

ayumi-san

なんでもいいと思っているんですよ。子どもも親も、目の前の問題から少し離れて、心のよりどころにできるところ。それはおじいちゃんおばあちゃんのような親族であったり、友だちであったり。あるいは、スポーツとか芸術とかそういうのでもいいんです。何かしら、自分の心を解放できるところ。まずはそこかなあと。

sae

なるほど。わたしが最近よく思っているのは、「家族」という閉ざされた関係性に、そういった第三者が入り込めない状況にあることが、家族を社会から孤立させ、苦しめるのではないかなあと。もっとゆるやかに、それでいて確かに、つながっていられたらいいですよね。


ayumi-san

ひとり親家庭が頼れるところがあるということ。そして、周りの大人も「ひとり親はこうだ」みたいな勝手な決め付けではなく、いろんなあり方を認めて受け入れられること。この両方がある状態が理想ですね。

sae

今おっしゃったようなマイナスなイメージが、ひとり親家庭を社会とつながりにくくしていると思いますが、そんななかでもきちんと声を上げられるためには、何が必要だと思いますか?


ayumi-san

たぶん、助けを求めるっていうのができない人が多いんですよね。離婚をすることで疲弊していて、誰かに助けを求められるだけのエネルギーがもう残っていない状態なんです。親にエネルギーが残っていないと、子どもにもエネルギーがない。だから、そんな状態の人たちが、自ら助けを求めに行くことは基本的にはできないものと、周りがまず認識しないといけません。小学校や中学校などの子どもが必ず行く場所があるなら、そこの人たちにまず気づいて欲しい。それが、彼らを救うとっかかりになるのだと思います。行政も無料のいろいろな機関を用意しているけれど、どうしても敷居が高かったり、エネルギーのないなかで自らアクションを起こさなければならなかったりするので難しい側面がありますね。

sae

「エネルギーがもう残っていない」という今のお話、すごく納得です。頼れるところにアクセスすることにもエネルギーがいるんですよね。

ayumi-san

臨床心理士の先生が同じようなことを言っていて、そういう人たちは自分ではもうどうすることもできない状況に陥っているんです。逆に、多少でもエネルギーが残っている人であれば、自分たちで動く。わたしの面会交流の支援に来る人たちとか、うちの塾に来てくれる人たちというのは、エネルギーが残っているからまだいいんですよ。だから、本当は、そこに来ることさえできない人たちであったり、面会交流についても本当にそれが必要なのって実は協議離婚で、「面会交流?何それ?」みたいな人たちのほうが子どものことを考えられる余裕がない。でも、そういう人たちにはなかなかたどり着けていないというのが現状です。

sae

エネルギーを使い果たしてしまった人たちにこちらからアプローチをするにあたって、どうやってそもそも彼らを見つけ出すことができるでしょうか?

 ayumi-san

そこは、わたしたちも模索中です。たとえば掲示板。ちょっと前にmixiが流行りましたが、そこに「親の離婚を経験した子ども」というコミュニティがあって。5000人くらいの人がいるんですよ。Facebookとは違って匿名だったから、みんな本音を言うんですよ。いろんな言葉を使って表現ができる。「親のこと殺したい」とか「本当に憎んでいます」とか。でも、匿名性が保たれないと、言えなくて。mixiは利用者が少なくなってきているので、今ウィーズでも独自に「子どもの掲示板」というのをやっていますが、ぽつぽつと相談が入ります。今は小学生とかから携帯を持ち始めているので、そういう声が拾えるのはいいことですね。

もうちょっと団体としての認知度が高まってくれば、ネット経由以外でも、直接「こういう子がいるんですけど…」っていうような話も入って来やすくなるかなと思っています。前に静岡で5年間塾をやっていましたが、そのときも始めて3年目ぐらいから「こういう子が」っていう情報が入って来て、学校と連携ができるようになってきていたので、ここでも、ゆくゆくはそういうことをしていきたいです。

sae

最近NPO法人3keysがMexというサービスを立ち上げましたが、見えてこなかった子どもたちの声が、ネットがあるからこそ拾えるようになってきているのはいいですね。

ayumi-san

あれもすごくいいサイトですよね。もっと広まればいいなと思います。

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