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ステップファミリーから家族関係を読み解く

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今回のインタビューのテーマは「ステップファミリー」。

ステップファミリーとは、親の新しいパートナーとの生活を経験する子どものいる家族。離婚再婚を経て家族の再編成が起こったとき、往往にして、家族のメンバーはそれぞれの立場でさまざまな葛藤を抱えます。

そんなステップファミリーに対して支援を行う非営利団体SAJ(Stepfamily Association of Japan)に関わりながら、長らくステップファミリーの研究をされている、明治学院大学社会学部社会学科の野沢慎司教授。

研究室の左右の壁には家族関連の本がぎっしりと並び、大学時代を思い起こさせる懐かしい匂いがしました。

 

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「自然な家族」?

ー野沢先生は日本におけるステップファミリー研究の第一人者で、SAJにも関わっていらっしゃるんですよね。

まったく偶然だったんですよ。最初はステップファミリーという言葉自体、ほとんど知らないような状態で。

未知のある方から一通のメールが届いたんです。ステップファミリーの支援を日本に普及させる団体を作るので、家族を研究している野沢先生に手伝ってもらえないかって。当時、ステップファミリーを日本で研究している人はほとんどいなかった。離婚や再婚が珍しい話ではなくなっている昨今であれば、そういう家族の形も増えていくのだろうという関心もあり、SAJに関わるようになりました。

ーステップファミリーには、具体的にはどんなサポートが必要なんですか?

家族って、「お父さんとお母さんがいて、その下に子どもがいる。これでこそ自然だ」と、われわれはつい思ってしまいがちです。我が子に再婚相手を「この人が今日からあなたのお父さんだよ」なんて紹介して、今まで空いていたお父さんのポジションを再婚相手で埋めたくなる。ですが、子どもがその環境の変化に順応できずに反抗的な行動をとったり、家族関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。

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ー父・母・子の役者が揃っても、いきなり関係性を築き上げることはできないですよね。

継親は無理に親の役を演じなくていいんです。そもそも、「家族ってこういうもの」というふうに思い込まないところからはじめることが大事だと思います

子どもにはもともとお父さんがいます。別れたから父親に会わせない、ましてや「新しいお父さんがいるんだからもう会わせたくない。お父さんのことは忘れてちょうだい」という風にしてしまってよいのか? この子にとって、お父さんは一人でしょう。新しいパートナーがお父さんにならなくたっていいんじゃないか、と。あるいは、場合によっては、結果として、お父さんが2人になってもいいんじゃないか、と。

ーなるほど、継親子が「お父さんとして」関わろうとするからお互いにストレスになってしまうのならば、無理にそうしなければいい、と。

たとえば継父は、「お父さんという立場でなくても、子どもと仲良く、それなりに平和にやっていく道はあるんじゃないだろうかと考えているのです。「お父さんにならなきゃ! お母さんにならなきゃ!」と思うから平和が崩れて葛藤が生まれる。そういう側面もあることに、気づくことができたら楽になります

ーそういう風に夫婦関係の再編と親子関係の存続を別個のものとして切り離して考えられると、面会交流も実施されやすくなりそうですね。

親の離婚という大きな出来事を経験した際、お父さんお母さんとの関係が急激に変化し、この先どうなるのかわからない状況が子どもを不安定にさせます。会わせ続けたからといって子どもは奪われない社会の仕組みが必要です。元配偶者が困った人だから会わせたくないと一方の親が思ったとしても、子どもがどう感じるかはまた別です。本当に困った人かどうか、いずれ子ども自身が判断できるようになります。また、ステップファミリーは初婚の家族とは違うやり方で作り上げていくものだと知ってほしいと思います。初婚で失敗してしまったという意識が強いがゆえに、「今度こそ成功させたい」と思って同じようなかたちの家族を再建しようとする気持ちはわかるけれど、別物なんだという前提ではじめた方が道が拓けやすいです。

 

途中から家族に加わる難しさ

継父が「お父さん」役割、継母がお母さん役割を背負い込まなくていいというお話でしたが、ステップファミリーにおける「親の再婚相手」は、どういう役割でいればいいんでしょうか?

そうですねえ。まずは「継子と友だちになる」こと。お互いを知って、野球が好きなら「じゃあ一緒に観に行こう」とか、キャッチボールの相手になるとか。継子の好きな映画を一緒に楽しんでみるとか。上から目線ではなく、あくまで同じ高さで接する。

ー言われてみれば、「新しいお父さん(お母さん)だよ」ってシチュエーションは、家族が新たに加わるという衝撃に加えて、自分より立場の強い人が現れるという衝撃も同時に発生するということなんですよね…。

日本のステップファミリーで育つ経験をした20代から30代の男女20人くらいをインタビューしたことがあるのですが(※)、日本の場合は圧倒的に、新しいお父さんお母さんというポジションが自動的に当てはめられてしまう。

継父・継母と比較的よい関係性を築けているケースでは継子が継親を親とみなしている場合でも、継父・継母がしつけを担わ、「言うことを聞け」という強い立場を取っていなことが多いようでした。また、継親をまったく親と認めず、最初は抵抗あった場合でも「おじさん」とかニックネームで呼ぶ友だちのような関係性を築くなかで意外と気が合って、今では家で一緒に過ごすことが嬉しいと感じていたり、実母・実父には直接言いにくいことを継父・継母に相談できる関係になっていたりしたケースもありました

※野沢慎司・菊地真理 2014「若年成人継子が語る継親子関係の多様性─ステップファミリーにおける継親の役割と継子の適応─」『研究所年報』(明治学院大学社会学部付属研究所)44: 69-87.
野沢慎司2015「ステップファミリーの若年成人子が語る同居親との関係-親の再婚への適応における重要性」『社会イノベーション研究』(成城大学社会イノベーション学会) 10 (2): 59-83.

 

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