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放課後格差を是正する −学童保育の挑戦

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Chance For Allと印字されたTシャツに身をまとい登場したのは、特定非営利活動法人 ChanceForAll代表の中山勇魚さん。

こどもたちの放課後の格差を埋めるべく、東京都足立区・墨田区で民間学童保育「CFAKids」を展開されています。

ウェブサイトを見ると、「保護者だけのため」ではなく「こどものため」の学童であることが明示され、こどもたちが成長するための大切な放課後の時間をよくしたいという、強い思いが溢れています。

来年度から、新たに4校のオープンを控えるChance For Allの原点とこれからを伺いました。

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―中山さんが学童を始められたのは、どんなきっかけがあったのですか?

 

僕の両親は公務員で、何一つ不自由なく生活していたんです。ところが、親族のトラブルが原因で親から「もう家には帰れない」とメールが届き、一家で夜逃げをしました。それからは、都内を点々とする日々でした。

 

―急展開ですね…。

 

結局東京を転々とする生活になって。危うかった進学も、いろんな人に助けられて叶いました。努力に関係なく人生が変わっちゃうことって結構あるんだなって、自分がその立場になって初めて気づきました。

 

―世の理不尽さを身をもって感じられたんですね。

 

それでも、自分自身で何とかするしかない。それは、周囲に「助けを求める」ということも含めて。僕たちが危機を乗り切られたのは、親が多方面から情報を集めて、助けてくれる人たちと繋がれたから。その力を身につける場所として、放課後の時間を変えたいと思ったんです。

 

―学校現場ではなく、放課後に着目されたのはなぜですか?

 

義務教育は、良くも悪くも均一的です。日本全国どこの学校へ行っても、みんな同じように授業を受けて、宿題を課される。どこに住んでいても同じ質が担保されているというのはすごいことですが、裏を返せば「このレベルまで全員を達成させる」こと自体が目的になってしまって、なかなかこどもたち一人ひとりを見られない。

それに、こどもが学校にいる時間は1200時間、学童にいる時間は1600時間。つまり、学童にいる時間の方が長いんです。放課後は、人生においてすごく大きなウエイトを占めているわけです。ある子は毎週のように博物館や美術館に連れて行ってもらったり、色んな大人に会わせてもらったりしている一方で、そもそも親が家にいなくて外にも行けず、ずっと家でゲームやっているような子がいます。その差を埋めたい、と思ったんです。

 

―助けを求める力を養うために、CFAではどんな取り組みをしていますか?

 

「社会と自分がつながっている」ということを感じることで、「なんとかなる」という希望を持てたり、いろんな失敗を恐れずにできたりすると思っています。なので、CFAではいろいろな大人を呼んできてこどもたちに会わせたり、会社にお邪魔したり、地元のお店に行ったりというプログラムがあります。

 

―社会科見学みたいな感じですか?

 

先日はCFAの支援元でもある花王さんの工場へ行ってきました。製造現場を一通り見せてもらったあとに、商品デザインの部署の方々を交えて、シャンプーとリンスのボトルのデザインの違いについてチームで考えるプログラムをやりました。

 

―ボトルの側面の凸凹とかですか?

 

それって、大人の先入観なんです。それだけじゃなく、こどもたちは10個も20個も見つける。たとえば、ポンプの色がシャンプーは青で、リンスはピンクだとか。ボトルの裏面を見て、「ここに書いてある数字が違う」とか。大人の先入観から自由なこどもたちは、本当に純粋にいろいろな違いを見つけます。社員の方々も「こんなに見つけるとは思わなかった」と驚いていたくらい。>

テレビを通して知識として知るのと、作った人たちと触れ合うのは全然違う。自分の知らない世界があって、でもその世界にいる人たちも同じように人間なんだということを、実感してもらいたいという思いがあります。

 

―「自分の知らない世界」って、小学生に限らずありますよね。たとえば就活生だって、そういう世界と関わることなく飛び込んでいかないといけない。CFAのこどもたちが、小学生のうちにそういう体験ができるというのは、ちょっと羨ましいような気がします。

 

そうですね。学童のこどもたちは、保護者と過ごす時間が少ないこどもたちなので、そういう子に対して、むしろ集団だからこそできるようないろいろな経験をさせてあげたいです。

 

―先ほどのシャンプーとリンスのボトルのくだりで、社員さんがすごく驚かれたということでしたが、「自分の知らない世界」のなかの生身の人間に触れる機会の多い彼らだからこその反応だったのでしょうか。

 

そうかもしれません。普段、工場見学で受け入れているこどもたちよりも興味関心が高いし、人懐っこい。初対面の人に対しても、知っている人かのように自然に接していて、それはやはり普段から大人と接する機会が多いからなのかなと思いますね。

 

―わたしはその真逆のようなこども時代だったので、CFAのこどもたちがすごく近い距離で、いろいろな大人と接していて、すごくオープンに感じるというか、生きていく力を持っている感じがします。

 

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